私は普段ソフトウェアの開発に携わっているのですが、プロジェクトがいつも予定通り終わらないことに課題を感じています。
そのような状況のなか、しばらく前に知り合いから紹介されて、このカイゼン・ジャーニーを読みました。
本の内容
著者
著者は、市谷 聡啓さんと新井 剛さんです。
市谷さんは、元はプログラマとしてキャリアをスタートしたのち、SIerでのプロジェクトマネジメントや、アジャイル開発のマネジメントを経て、現在はギルドワークス株式会社/株式会社エナジャイルで代表をされています。
新井さんは、駅すぱあとで有名なヴァル研究所の開発部長/株式会社エナジャイルCOOで、CSPやCSMなどスクラム開発の資格を保持されています。
自身の実践から得た経験値を通じて、ソフトウェア開発の現場を良い方向に変えていくため、この本を執筆されたようです。
概要
問題だらけのSIerに勤務する主人公が、ひとつひとつ段階を経てカイゼンに取り組んでいくという、架空のストーリーが軸になっています。
ストーリー中で用いられる手法などは、コラムなどで詳しく説明されています。
大きくは3部構成で、
- 一人から始める
- チームで強くなる
- みんなを巻き込む
の順にカイゼンが進んでいきます。
ポイント
最終的には、アジャイル開発/スクラム開発といったソフトウェア開発の手法をベースに、カイゼンを実践していくことを提案した内容です。
主人公と同じSIerや、ソフトウェアメーカーなどに勤務している人には、「こんな状況あるある」な内容でしょう。
アジャイル開発やスクラム開発を知らない人や、知っていてもうまく運用できていない人には、本書が参考になると思います。
ストーリー仕立てなので読み進めやすい一方、紹介された手法などを十分に理解しないままでも、先に進みたくなってしまう誘惑にかられます。
そんなときは、何回か読み直してみるのが良いでしょう。
レビュー
いろいろ試してみたいことはありましたが、今日からさっそく始めた内容が2点あります。
[su_note]・4つのプラクティス
・アジャイルな計画[/su_note]
4つのプラクティス
仕事をする上での習慣的な取り組みが、「プラクティス」と呼ばれています。
具体的には、以下の4つのプラクティスから始めてみる形です。
- タスクマネジメント・・・タスクの目的や背景を理解して管理
- タスクボード・・・計画したタスクの見える化
- 朝会・・・変化の察知
- ふりかえり・・・行動した結果の気づきとカイゼン
特段目新しい話ではありませんが、あらためて自身やチームができているかというと、はてなマークがついてしまいます。
本書内では、具体的な手法や実践にあたっての注意点などが、詳細に説明されています。
アジャイルな計画
ソフトウェア開発は定型的な仕事ではないので、最初にどんなに注意深く見積もりをしてもズレは生じてしまいます。
また、クライアントの依頼やチームの状況によって、不確定な事象が必ず発生します。
そのまま最初の計画に固執して進めても、結果的に満足のいく成果物はできません。
メンバーが疲弊するだけして、モチベーションを落としたり転職したりの未来が待っています。
「最初の計画が変更になるのは当たり前」の前提で、いかに計画を修正していくかが重要であることが示唆されます。
私も、以前マネジメントを担当したプロジェクトで、当初の計画に固執しすぎて、最終的にクライアントの目的が満たせないシステムを作ってしまった苦い思い出があります。
あのときの自分に、本書を贈りたいなと思います。
感想
冒頭で、「それぞれの現場で条件や制約は異なるから、外から得た学びをそのまま適用しようとしない」という一文があります。
書籍や勉強会などで新しい知識や手法を知ると、テンションが上がってすぐ自分の職場で試したくなります。
すぐ行動することは大切ですが、一呼吸おいて自身の背景やチームの状況などを考えた上で、それがうまく機能するようなカイゼンの進め方をしていきたいと思いました。